産後の10日間①(工事中)

午後4時半過ぎ、やっと病室に戻ってきた私の体は下半身に麻酔がかかっていて、まったく動けない。麻酔のせいか、頭も痛く、体もだるかった。
しばらくは食事は出来なくて点滴のみ、トイレも寝たままのカテーテルを付けっぱなし・・・シャワーも先生がいいですよと言うまではダメ。何か手元に持ってくるのも人の手を借りなくてはいけない。
今日から3日間は母が付き添いで泊まっていってくれる事になっていた。

★6月12日(水)★
看護婦さんが濃い黄色の点滴を持ってきた。
「子宮を収縮する薬がはいってますから、お腹が痛くなると思うけど出来るだけ我慢してね・・・どうやっても我慢できなかったら呼んで下さい」
と言って刺しっぱなしの点滴の薬を替えて行った。
しばらくすると、じわじわーっと下腹部に痛みが出てきた。きりきりしてるような、ちくちくしてるような・・・(自然分娩の場合に起こる陣痛の波のない痛みっぱなしのようなものなのかなぁ)なんて思っていた。しかし痛い。ものすごく痛くて、ベットの中で手をバタバタさせたり、頭を振ったり・・・大声を上げて「イターイ!」と叫んだ。
その点滴は1時間くらいで済んだ。点滴が済むとまた同じ点滴がやってきた。
そして同じ様に「イターイ」と叫び、体をバタバタさせた。
こんなに痛いものだとは思っていなかった。ものすごい痛み。苦しくって、酸素を少しもらった。
午後7時半頃、母は食事とお風呂のために一度家へ帰っていった。病室には私と旦那の二人だけ。
そこへ、当直の看護婦さんがやってきた。悪露のパットの交換だったけど、母がいないので看護婦さん一人でやらなくちゃいけない。下半身の麻痺している私の足を持ち上げてパットの交換は一人ではちょっと無理。というわけで、看護婦さんは私に
「ご主人に手伝ってもらってもいい?」
と聞いてきた。私はしばらく悩んだ。いくら夫婦でもやっぱり恥ずかしいし、しかも血まみれな状態を見られるんだから・・・看護婦さんは、嫌だったら母が戻ってきてからにするよと言ってくれたけど、また来てもらうのも申し訳なかったので旦那・看護婦さんペアに任せることにした。
「ご主人、パットを換えるか、足を持ち上げるかどっちがいい?」
「じゃぁ僕はパットを換えます」
「それじゃあ、私が足を持ち上げたら今あるパットをどかして、このパットを敷いてください」
「はい、わかりました」
旦那の声は緊張している。
「いっせーのっ」
ものすごいコンビネーションであっという間に終わった。
看護婦さんが戻ってから旦那は
「ものすごくたくさん血が出とったけど、大丈夫??」
と心配していた。
彼にとっては、ものすごい体験をしたことになる。そう考えると、旦那にお願いしてよったと思った。妊娠も出産も女だけのお仕事じゃないんだし、ちょっとでも出産の大変さが分かってもらえたかなーと思うと後悔はなかった。
午後8時、旦那はひと仕事終えたような満足気な顔をして帰っていった。
午後9時、睡魔が急に襲ってきて眠った。
・・・・もつかの間、お腹が痛み出して、熱が上がってきた。この痛みは傷なのか、子宮なのかよく分からない。出来る限り我慢していたんだけど、痛くて眠れなくなってしまったので看護婦さんを呼んで鎮痛剤をうってもらった。だけど、痛みはあまり治まらなかった。
指に付けている脈拍をはかるような機械が突然「ブーッ」と鳴り出しては止まり、鳴り出しては止まり、そのたびに看護婦さんを呼んだ。全然寝れないよー。
結局、その機械はなんの意味もないらしく、外すことになった。ずっと付けてたから指の皮がめくれてきちゃった。
やっと落ち着いて眠れるようになったらもう朝でした。
★6月13日★
朝、5時にめが覚めた。ほとんど眠れなくってすっきりしない朝。
なんとなく足のしびれがなくなってきました。頑張って動かそうとするんだけど、お腹にも力をいれないとなかなか動かせないからピクッとうごく程度。
また子宮の収縮の点滴がやってきた。もう点滴の色を見るだけでゾゾッとする。
麻酔のせいなのか、頭がガンガン痛くて、38度近く熱がある。わりと体はピンピンして、だるさのようなものはないけど、熱は下がる事はない。
今日から少しづつ水分を取っても良いということで、「ポカリ」や「麦茶」を飲む。
と言っても、自分で飲むのはまだ少し大変なんで、体を少し起こしてもらいながら飲ましてもらった。久しぶりの味気のあるもの・・・・生き返ったー。
しかし、相変わらず子宮はズキズキ痛むし、傷も痛い。
午後1時、ようやくコドモとご対面。自分で行くのは無理なんで、看護婦さんに連れて来てもらった。
やっとしっかりと顔を見る事ができた。感動するかなーなんて思っていたけど、それほどでもなかった。まわりに看護婦さんや母がいたからかもしれないけど、涙なんてモンはなかった。
ちょっとだけ抱っこした。ちっこくて軽くってくしゃっとして、顔は傷だらけ。
だけど、かわいい。眉毛はほとんど生えてない。そんな顔を見ながら、このまま眉毛生えてこなかったらどうしよー・・・・とか、眉毛が額の辺りから生えてきたらどうしよーなんてバカな事ばっか考えていた。
看護婦さんが
「もう少しこのまま部屋に置いていこうか」
と言ってくれたけど、抱っこもあまりしてあげられないので、新生児室に戻してもらった。
その後、先生の回診と清拭があった。あまり動かすと傷が痛いんだけど、看護婦さんはガンガン動かす。どうやら動かないと子宮の回復が遅れるらしいです。
明日はカテーテルが取れて自分でトイレへ行かなくては・・・・・こんな痛いので自分でなんてトイレへ行く自信はない。
★6月14日★
6時にめが覚めた。熱は相変わらず38度近くある。
今日から流動食。何を食わせてくれるんだーと期待していたけど、「おもゆ」でした。こんなん腹のたしにはならない。母に食べさせてもらった。なんかみじめな気がした。何ひとつ自分で出来ない事がなんだかすごく悔しくなった。
そして、また点滴。子宮の収縮が始まる。もぉーやだ!
昼ごはんは「おもゆ」からおかゆ」なった。ちょっとだけおかずもついてきた。
うれしっ。
午後からコドモにオッパイをふくませるために、看護婦さんに連れてきてもらった。ママの体の負担にならない程度に吸わせた。でも、乳は出てるカンジではない。
カテーテルを外した。看護婦さんの肩を借りながら、自分でトイレまで行く。20分くらいかかった。傷が痛くてなかなか腰を降ろせなくて、「アイタタタ」を連発。どうにか自分で出来ました。お腹がゴロゴロ言う。ガスが溜まっているみたい。だけど、出したくても力が入らなくて出ない。
夜、仕事帰りにパパが顔を見にきてくれた。面会時間終了のほんの少し前だったから15分位いただけだったけど、ものすごくうれしかった。
パパがいる15分の間に、ぷ~が出ました。ぷ~というカンジじゃなくて、ブリッてカンジ。パパに聞かれてしまった。だけど、ほとんど物を食べてないから臭くはなかったからよかった。
このぷ~がパパの前で出してしまった最初で最後のぷ~です。(今んトコ)



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